航空書簡のうつりかわり ~飛行機で運ばれたメール~
収蔵品
1 航空書簡とは 2 航空書簡の変遷3 私製航空書簡4 廃止
1 航空書簡とは
航空書簡とは、航空郵便をより安く、軽く送れるよう考案された航空便専用の封筒兼用便せんのことをいいます。
料額が印刷されているため切手を貼る必要がなく、折りたたんで差し出すだけという簡易的な形式であり、国際郵便の一つとして利用されてきました。
これから日本の航空書簡のうつりかわりについてご紹介します。
2 航空書簡の変遷
日本で最初に航空書簡の取り扱いが開始されたのは、1949(昭和24)年3月1日でした(1)【図1】。同年、外国郵便料金規則の改正、続いて翌年には、GHQにより国内の一部は航空郵便の再開が許可されるなど航空便に関する事業の再開が続きました。

【図1】航空書簡、2羽の雁(料額印面意匠)、本券、1949年(5570-0001-002)
当時、航空書簡の規定がなかったので、アメリカの航空書簡「Air Letter(エアレター)」と同じ様式が取り入れられました。
日本では名称としてそのまま用いられていましたが、1952(昭和27)年に開催された万国郵便連合(UPU)の第13回ブラッセル大会議で、新しい規定として正式な名称は「Aerogramme(エログラム)」と定められました【図2】。

【図2】航空書簡、右向きツバメ(料額印面意匠)、本券、1952年(5570-0009-002)
航空通常郵便料金は距離制で地帯別に分けられていましたが、航空書簡は全世界均一の料金なので、料金の心配もなく送ることができました。
その代わり、他の物の封入添付等は一切禁止(2)、料額印面の切り取り、切手の貼り替えの禁止などの制限がありました。
航空書簡の料金は、外国書状の基本料金に航空増料金が加えられたものであり、その料金が改正されるたび、航空書簡の料金も変更されていきました。
料金の値上げ、値下げによる対応として、売れ残っている航空書簡には切手の加貼またはゴム印による加刷等が施されました。
また、様式も1965(昭和40)年に折りたたみ・封かん方式の改正【図3】、1975(昭和50)年には三つ折りに改正【図4】されました。

【図3】航空書簡、飛天(料額印面意匠)・青枠、本券、1965年(5570-0013-002)

【図4】航空書簡、飛天(料額印面意匠)・ローマ字入り、様式改訂、本券、1975年(5570-0017-002)
航空書簡は郵便局のほか、飛行場などではがきなどと同様に発売され、簡単に購入できたことから、海外向けの通信の手段として多く利用されました。
3 私製航空書簡
1960年代になると、航空書簡をダイレクトメールとして利用する企業から私製航空書簡の要望が大きくなっていきました。
その理由としては、官製の航空書簡は商社等が大量に購入した後、保管には切手類と同様の扱いが必要になること、社名および広告を印刷するのに不便なこと、書き損じた場合の損失が大きいことなどからくるものでした。
そのような流れから、1964(昭和39)年に東京で開催される第18回オリンピック競技大会で、ホテル業者等による宿泊者等への航空書簡の提供の増加が想定されたため、同年3月5日郵政省令第4号の制定(3)に伴い、4月1日より私製が承認されました。
作成するにあたって、広告等の表示に関しては、表面部、裏面部とも表示等を妨げず、面積の1/3より越えない範囲なら印刷は可能であり、また会社、ホテルなどが大量に利用するときには、差出人住所氏名写真、マーク、テレックス(4)番号など予め印刷して利用できるなどのメリットがありました。
しかし、許される規格様式は官製と大体同様のものとされ、「私製航空書簡承認申請書」と見本10枚を提出し、地方郵政局長の承認を受ける必要があり、承認後は裏面部の下部に「〇〇郵政局承認第〇〇号」と表示すること、また見本と違ったら承認は取り消されるといったデメリットがありました。
当時は、手間のかかる承認番号を付与し、大量に航空書簡を購入したのち、社名、広告等の加刷注文および販売のサービスを請け負う業者もありました。
4 廃止
高度成長期には海外留学や国際交流も増え、企業にも多く利用されてきた航空書簡でしたが、販売枚数が低調であることを理由に国際郵便はがきとともに2023(令和5)年9月30日に取扱い終了となりました。(5)
インターネットや電子メールの普及で、通信がデジタル化された現在では航空書簡は航空郵便そして国際交流の歴史を伝える貴重な資料であると同時に、失われつつある手紙文化の一つともいえるかもしれません。
(学芸員・田仲明子)
(注)
- 『逓信公報』第414号、1949年2月25日、103頁。↑
- 1971(昭和46)年以降になると料金納付の切手のための郵便切手、郵便業務上の票符、更にあて名を記載した薄い紙片を添付できるようになり、2006(平成18)年以降は全体の重量が25グラムを超えない範囲で写真等の同封ができるようになった。↑
- 『郵政公報』第2910号、1964年3月6日、97~99頁。↑
- 加入電信ともいう。印刷電信機により文言のみを記録通信するもので、主に企業内のメッセージ通信として利用された。↑
- 日本郵政グループ公式ホームページ、2023年2月21日プレスリリース、
航空書簡の取り扱いおよび国際郵便はがきの販売の終了などに関する国際郵便約款の変更(https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2023/00_honsha/0221_01.html(2026年5月12日最終アクセス)↑