博物館ノート

デルビル磁石式壁掛電話機

収蔵品

明治二十九年(一八九六年)七月、それまで使用されていたガワーベル電話機に代わり、デルビル磁石式電話機が登場しました。
壁掛型でデルビル送話器を使ったところからデルビル磁石式壁掛電話機と名前がつけられました。
デルビル電話機はベルギーのベル電話製造会社から来たといわれています。
それまでのガワーベル送話器が炭素棒を使っていたのに対し、デルビルは炭素粒にして接触点の数を増やしました。これにより、感度が高くなり、逆に周囲の騒音まで拾ってしまうほどでした。その為、通話の際は送話口から三~六センチメートルほど離れて通話をするようにという注意事項がありました。
それまでのガワーベル電話機は、電話局へ信号を送る際に一次電池としてダニエル電池十個を使用し、ボタンを押して直流電流を送り、信号の受信には継電器と羽子板電鈴がついていました。デルビルは磁石発電機と交流ベルがこれに変わり、電話局には直流を交流に変える自動変極器(間もなく信号発電機に変更)をおきました。
加入者は磁石発電機のハンドルを回して電話局へ信号を送り、電話局からは自動変極器からの交流を加入者に送り、加入者電話機のベルを鳴らしました。この磁石発電機を持つ電話機のことを磁石式電話機と呼んでいます。
木箱の中に磁石発電機、磁石電鈴、誘導線輪などの附属品が入っており、一次電池はそのすぐ下にテーブルのように取り付けた別の木箱の中にレクランシー電池二個が入っています。
デルビル電話機は壁掛型の他、卓上型も作られました。その後、共電式、自動式と並行して小規模局で昭和四十年頃までの長期に亘って使用されました。

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この記事は、「逓信総合博物館 展示品・所蔵品紹介」『通信文化』(6号、通巻1216号、47p、公益財団法人通信文化協会発行、2012年)掲載記事からの転載です