博物館ノート

歴史的建造物

郵政事業の変遷

   郵政事業の起源や変革を支えてきた建物の多くは、時代のシンボルとして様々な歴史を刻んできました。しかし、これらの貴重な建造物は現存するものが少なく、現在は資料を通して私たちに、日本の近代建築の歴史を教えてくれます。

(1)郵便創業時の東京郵便役所と駅逓寮

郵便創業当時の東京郵便役所は、東京の日本橋四日市に置かれました。その敷地内にあった駅逓寮は、魚河岸の魚を納める旧幕府の御納屋役所を改造した建物です。
前島密の『郵便創業談』によると、前島密の執務する机は、棚をはずして改造した押入れの中に置かれており、夏場は暑さが厳しく、薄壁越しには近所の稲荷でやっている講談の声や酔客の喧騒がきこえてきて実に騒々しかったと書かれています。
これらの郵便役所は、東京のほか、京都と大阪に開設。さらに郵便取扱所が、3都市間をむすぶ宿駅に62ヶ所設置されました。

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設立:1871(明治4)年  所在地:日本橋四日市

(2)宇治山田郵便局

宇治山田郵便局は、現存する明治期の貴重な郵政建築として、重要文化財に指定されています。V字型に連なる局舎の中央部分に、円形ドームの中央塔を配置した斬新なデザインの木造洋風局舎です。その歴史は、山田郵便役所として明治5年に開設されて以来、事業の拡大に伴う新局舎の建設と移転を繰り返し、名称も宇治山田郵便局、伊勢郵便局と改称されてきました。

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設立:1872(明治5)年  所在地:名古屋 博物館明治村

(3)東京郵便電信局

明治25年に、赤坂離宮を設計した片山東熊によって建てられました(写真上)。現存していれば、ギリシャ風円柱のレリーフや窓ステンドグラス、3階までの吹き抜け構造などのルネサンス様式が、代表的近代洋風建物として評価されていたことでしょう。なお建物内部は、「郵便現業絵巻」(写真下)に詳しく描かれています。また郵便電信局では、郵便と電信の業務を行い、それまで逓信管理局が行っていた管理業務の一部も担当していました。

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設立:1892(明治25)年  所在地:日本橋四日市(四日市逓寮跡地)

(4)逓信省庁舎

本格的なルネサンス様式の建物で、正面玄関部分などに圧倒されるような雰囲気を持つ逓信省庁舎です。完成当時は東洋一とも言われ、数少ない新築庁舎の中で一際威容を誇っていました。
建物は吉井茂則と内田四郎の設計で、煉瓦造り3階建て、建坪3,356坪、左玄関横の3室には逓信博物館が設置、庁舎中央部には3階建ての貯金局庁舎が抱かれるように併設されていました。しかし関東大震災で倒壊、焼失してしまいました。

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設立:1910(明治43)年  所在地:京橋区木挽町(現在の銀座8丁目、銀座郵便局の地)

(5)東京中央郵便局

耐火耐震性に優れた建物として昭和4年に起工、昭和6年に竣工しました。昭和8年より、東京駅に隣接する東京中央郵便局庁舎として、業務を開始しました。そのスタイルは、旧来の煉瓦造の東京駅とは対照的に、外壁は白い磁器タイルを貼り装飾のない合理的なもの(写真右)で、当時の人々に清新なイメージを与えました。さらに、ドイツの建築家ブルーノ・タウトが「日本における近代主義的建築物」として絶賛し、日本の近代建築の歴史に、大きな足跡を残しています。

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設立:1933(昭和8)年  所在地:東京駅駅前広場

(6)東京逓信病院と東京中央電信局

東京中央電信局(写真上)は、麹町区銭瓶町(現在の大手町・旧東京支社の向かいあたり)に完成した、美しいアーチ曲線を持つ局舎です。
東京逓信病院(写真下)は、大規模で白亜の御殿と呼ぶにふさわしい近代的なスタイルで、岸田国士原作「暖流」の舞台として脚光を浴びました。
これらの建物は、京都タワーや日本武道館などをデザインした山田守が、やわらかな曲線、アーチ、パラボラなどの手法を駆使し、設計したものです。

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東京中央電信局  設立:1925(大正14)年  所在地:麹町区銭瓶町

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東京逓信病院   設立:1937(昭和12)年  所在地:麹町区富士見町